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セミナー情報

元プロ野球選手・野球解説者 鈴木尚広氏「ストレッチと怪我の関係性について」

日時

2018年1月25日(木)
10:00~ 12:00

講師・プロフィール

鈴木 尚広氏(元プロ野球選手でスポーツコメンテーター)

セミナー名

「ストレッチと怪我の関係性について」



セミナーレポート


<開会挨拶 概要>

ジャパンパートナーズストレッチ協会 黒川理事長


ストレッチということを世の中に広めていく上で、よりきちんとした技術を安全に届け、スポーツ選手から一般の人まで安全にストレッチが受けられるよう業界の中で発信させていただきたいと思い、協会を設立しました。今後は、検定試験を含めて制度化を進めていきたいと考えています。鈴木元選手に第1回目のセミナーの講演を引き受けていただくことになりましたが、今日は鈴木元選手の現役時代の話やストレッチの大切さなど貴重なお話を頂きます。これからストレッチ協会を一緒に盛り上げていってくれれば嬉しいと思います。


<セミナー概要>

私は読売巨人軍で20年プレーしてきましたが、とても怪我が多かったので、様々なものを試して最終的にたどり着いたのがストレッチなのです。 野球の世界とは非常に競争の激しい世界で、1年1年の勝負で意識の高さは非常に高いです。球団からもういらないと言われたら次の仕事を探さなければならず、今まで頑張ってやっとプロになり、野球しかやってきていない状況でなかなか切り替えられません。


野球選手の辞める原因で一番多いのが怪我です。私も最初の1年間は、巨人軍史上最多で3回も骨折し、つけられたあだ名は「骨折くん」でした。骨折が多かったので、気を利かせてくれたコーチがダンボールに入ったうなぎの骨を持ってきて、これを食べれば強くなれると言われ、右手指を骨折した時に毎日カルシウムを摂取しました。でもその結果また2回骨折をしてしまった。結果はカルシウム不足ではありませんでした。


自分の努力が実を結んで憧れの巨人軍に入りましたが、プロとして全く歯が立たたず打ちのめされました。高校野球で使っている金属バットからプロは木製に変わります。木製だと芯をとらえないと打てず、前にも外野にも全然飛びませんでした。しかし一軍の選手、例えばゴジラ松井さんは一人でゴルフボールを打っているのではないかと思うぐらい飛んでいたし、他の選手も野球の質は違うがコントロールできていて、私は最初から打ちのめされました。


私はプロに入って一軍に上がったのは6年目からで決してエリートではないです。5年間ずっと怪我の連続で、とにかく多かったのが肉離れでした。腰痛もありました。それで、自分を何か変えなければならないと切羽詰まっていました。一年一年、怪我をすると、結果が出る、出ない以前に、組織から戦力外の空気感を感じてしまう。


そういった中で、当時、清原さんが個人トレーナーを雇って肉体改造をはかるという自分に投資していたので、私もそれに便乗してみました。自分も給料の半分はトレーニングにかけました。しかし、当時はトレーニングに対して無知でした。年齢を重ねれば重ねるほどストレッチの重要性を感じますが、若い時はあんまり感じていませんでした。




そこで、次にインナーに着目し、トレーナーの先生と体の改善から始めました。トレーニングでもインナーをたくさん鍛えたところ、インナー優位のアウターが働き出すようになり、緊張と弛緩の中でパフォーマンスが出せるようになってきました。ここまでで7年、8年かかっていますが、まだ一切ストレッチはしていません。ストレッチの重要性はまだこの時点で認識していませんでした。


さて、スタジアムで4万5千人の前に立つ緊張を想像してみてください。緊張から緊張が生まれていったらパフォーマンスも出ないし、ましてや怪我にも繋がっていきます。リラックスをすることがとても大事ですよね。ストレッチは当然、筋肉の改善や可動域を伸ばしたりという効果がありますが、リラックスしたり体を緩めたりすることができます。


球場にもトレーナーや鍼灸師、PTATが一軍であれば7人、8人くらいいて、選手はマッサージを受けられます。選手の中でも、野手と違ってピッチャーは順番が決まっているので、試合中にマッサージをしていて、それを見て、自分はこんなに準備しているのに、いいなと思っていました。(笑)


年間143試合ありますが、心技体と言われているように、常に4万5千人に見られる緊張感や自分の身体がどうなるかという緊張感で、身体が固まることが多いのです。ストレッチを取り入れるまで時間がかかりましたが、そういう意味でコンディショニングというのはすごく大事で、怪我をしなければパフォーマンスが出せるし、逆に怪我をしてしまうと前の状態に戻れなくなります。


プレーは自分たちが怪我をしやすい状況を作っていて、筋肉は使っていると固まっていってしまいます。 今はストレッチポールとか必ず試合が終わった後にクールダウンするようになってきていますが、野球選手もストレッチが苦手でウォーミングアップだけしかしない選手が多いのです。年数が経つうちに自分の身体を扱いにくくなります。大人も運動会で空回りして肉離れになります、ストレッチしないで、血液の循環が悪く、心と体が一致しない状態で走ったら怪我をします。


周りからはプロ野球選手は当然やっていると思われていますが、やらなければ去っていくだけの競争の世界で、それがいいとか悪いとかではなく自己判断に任されています。 でも意識の高い人、今の監督の高橋由伸さんはずっとストレッチをしていて、ストレッチをしないと自分が怪我をするという状態をセンサーで感知しているようです。


ストレッチは徐々に徐々にひろがってきていますが、野球界は外様を許さないことがあって、その辺の問題はありますが、今は超一流の方は身体を大事にしているので、一郎さんをみてください、七年間朝食にカレーは食べられませんが(笑) 常に身体を動かして、マウンドでストレッチしたり、いつでも動けるアクセルを踏んでいます。また、ストレッチをすると姿勢がよくなります。一流の方になればなるほど、身体に対してケアをしています。そこが大事な部分です。




これからキャンプシーズンですが、キャンプは朝8時からから夕方5時くらいまで長々と野球やります。集団行動なので実動時間は短くてサッカー選手に比べると体力もそんなに必要ないし、野手と違ってピッチャーだと恰幅のいい、ラーメン大好き、脱いだら驚くような、大竹かんちゃんっていう人もいます(笑)。プロ野球選手は個人事業主で全て自己管理なので、日々の活動ですごく差が出てきます。


一日一日にするとちょっとの差で、自分は何かを気を付けるとか、お風呂上りの血液の循環がよくなったらストレッチしようとか、そういう風に考えている人はなかなかいないが、ちょっとしたことです。パフォーマンスが上がっている人は、寒いときには必ず前に体を温めています。言われる前にホットパックをしたり、常にストレッチしたりしています。私はそれを毎日実践してきて、怪我をするということを考えなくなりました。それまでに20年くらいかかりました。


シーズンオフは二か月間あって拘束されないので何をしていてもいいのですが、ここでやる人とやらない人に違いがでてきます。一軍と二軍でいえば、二軍の選手は与えられたことを一生懸命にやりますが、それは誰でもできます。しかし、一軍選手は本気で仕事していて、考えて、行動して、決断していきます。一人ひとりが独立していて、自分がよりよくなるために常に成功にむかってやっていきますが、言われたことを教科書通りに一生懸命やるだけだと伸びしろがありません。社会にも飛び出ないしコミュニケーションもとらなければ、成功するのは難しい。だから、皆さんも一人ひとりが独立して自分の意志というものを持ってもらいたい。


最初は一生懸命に目の前のことをやることでいいのです。それを本気にするのですが、ほんの少しの差です。例えば、二軍の選手は馴れ合いが好きですが、一対一の勝負なのに、馴れ合いしてもしょうがないです。一方、一軍の選手はネガティブなことは一切言いませんし、成功できなかったら新しい練習方法とか考え方を取り入れて、常に何かを向上しています。


私はどの世界にも答えはない、これをしたら100点ということはないと思います。だから自分でオリジナリティを見つけていくのはすごく大事だと思います。 それは環境や立場によっても変わるでしょうが、皆さんが年数を重ねるほどプロとしての立場というのは上がっていきます。そしていつでも負けず嫌いでいてください。


人をけなすのではなく、自分でやったことを素直に認めて受け入れる、正直な負けず嫌いというのはすごく成長すると思います。良い選手になればなるほど背中で感じさせています。常に向上心の塊です。皆さんも向上心を常に高いところに持ってください。そうすると自分のビジョンというものも見えてきます。


ストレッチでも何事も継続性で積み重ねて行っていくことが大事です。そのためにパートナーを見つけて二人でやることがすごく大事だと思っています。ストレッチの技術があることは当たり前で、その上でコミュニケーションはすごく大事です。一方的にやりだしても受け手は固まっています。心を開いてあげるのは言葉と言葉のコミュニケーションです。ただそれは技術があったうえの話で、コミュニケーションだけではいけない。どうしたいのか聞いたときに適切に応えられる、ある意味コーチのように、受け手に寄り添ってコミュニケーション取りながらやっていくと、筋肉が緩み、ストレッチの効果は絶大になってくると思います。





私はトレーナーの先生と年間143試合、移動があってもどんな日でも毎日50分、常にやり続けていました。そうすると自分の身体をだんだん理解して知れるようになり、疲れにくく、緊張感を保てるようになり私の動きは大きく変わってきました。 甲子園球場にいたらずっと野次しか飛ばないですし(笑)143日間、肉体的な疲労と見られる疲労、そんな強いプレッシャーを解放できるのは、やはり信頼できるパートナーとストレッチやコンディショニングをしていくことだと思います。


私は常に身体を滑らかにすること、ストレッチで筋肉を緩める作業をやり続けた結果、少しずつパフォーマンスがアップしてきました。私はストレッチというものに気づくまで時間がかかりましたが、最初のアウターのトレーニングもストレッチを取り入れられていたらよかったと思う。 私にとってはトレーニングも栄養も睡眠もストレッチも常につながっていて、欠かせない存在です。


まだプロ野球選手も意識は決して高くはないし、広めていかなければいけないと思っています。 だから皆さんからも子供達に小さい時からその大切さを教えてあげてほしいと思います。 先を見てその現実に気づかないとわからないこともあるので、皆さんはからも、プロ野球選手はこう言っていたと、伝えて欲しいと思います。


今はストレス社会といわれていますが、一般の人にもストレッチは大事です。私は意味をよく理解していますが、引退したときに、OBからもよくストレッチはしなさいと言われました。 今まではストレッチを自分の感覚でやってきていましたが、今日は改めて効果について調べてきました。 「筋肉の組織血流の改善」「神経機能の向上」「筋萎縮の抑制」と、全部スポーツに直結してくる内容です。自分の過去の経験にも全部当てはまってきますが、これはスポーツに限らず一般社会においてもあてはまると思います。


現役時代、トレーナーとの時間は僕にとってオフの時間でした。皆さんはその受け手をオフにする空間をぜひ作ってほしいと思います。技術的な専門的なことはわかりませんが、なんでも話せて、それが自分にとってのオフの瞬間になるようなトレーナーがいたらいいと思います。 プロ野球選手は自分の自己管理と体のケアが重要で経験と技術は上がっていきますが、皆さんも同じようなことが言えます。


皆さんは皆が怪我をしないためのキーになる存在です。私は経験者としては言えますが、皆さんはそこを携わって変えていける人たちです。皆さんが子供達やアスリートのパフォーマンスを出せる一つのピースとなっていったら、仕事としてのモチベーションが上がりますよね、新しい選手が来たらもっとこういう選手をやっていこうとか、いつも携われるのは皆さんはですから、そういった意識を大事にしてください。


技術があった上でコミュニケーションがあることが大事だと言いましたが、私も何も喋らない人は緊張して、いくらストレッチをしてもなかなか伸びません。それはやはり生身の人間ですから教科書だけでなく経験していくことです。また、俺が俺がという人もいますが、どんなに技術があっても下の方がついてくるというのは、困った時に声をかけてくれるとか、人と人のとの携わりで、それをなくしてしまったらいくら技術があってもなかなかうまくいかないということです。皆さん最高の技術を持っていらっしゃると思いますので。これは僕がプロ野球でしてもらってきた受け手側の視点です。


それと、コミュニケーションの中で、相手にもこうやった方がいいというヒントを与えることは必要です。そうしないと受ける側も気づいていかないのです。機能的な回復は自分のこと知ってなかったら分からない、それなのに知らない人の方が多いので、全身マッサージのように任せきりになるのではなく、ヒントを与えるのです。例えば君はここが張りやすいよ、サッカーにはここが大事だよ、ここが怪我に繋がっていくよとか、そういった話をして気付かせてあげられるということを寄り添ってやっていくと結果がかなり違ってくると思います。


スポーツに限らず、お子さんから年配までそれぞれ求めているものは違うと思いますが、皆さんはそれをできる立場なので、幅広いニーズの中でコミュニケーションを取って、技術もしっかりしたものを追い求めていってほしいと思います。技術も答えはありません、死ぬまで発展してきますので、向上心を持ってやっていっていただければいいと思います。


さっきストレッチの意味、重要性、何故僕はそこに気づいたのかを考えた時、ドンピシャだなあと思いました。プロの選手の声というものを反映してもらって、ストレッチを日本全国、世界、子供達、年配の人たちへ健康に生きるために、すごく必要な要素だということを言っていっていただければすごくいいと思います。ありがとうございました。




(余談)

ここでプロ野球のお金の話を皆さん聞きたいでしょうか。一軍と二軍と育成というのがあり、一流の選手は最低年俸が決まっています。一軍の選手の最低年俸は・・正解は1500万です。


昨日契約した松坂選手は最低年俸の1500万です。では二軍の選手は同じ球団ですけれども一軍との差はとてつもなくあり、480万円です。育成というシステムがありますこれは240万です。


プロ野球は12チームありますが、一チームで入れる人数が限られていますが、一軍と二軍を合わせて70人しかいません。これに育成は入っていません。育成の選手は登録される7月の終わりまで頑張って成績を出して、初めて番号が二桁になってくるので、それまでは三桁です。7月いっぱいまで結果を出せなければずっと育成です。そのぐらい厳しい。


巨人軍では育成だけでも約20人いるので、チーム全体で約90人いますが、それもドラフトにかからないと入れません。指名されて初めてドラフトにかかります。


テレビに出ている選手はどのくらいいると思いますか。90人の中からたった28人です。これでも投手と野手がいます。投手が13人。野手が15人。ピッチャーが12チームで30に40人いる、これだけ競争が激しいのがプロ野球です。


プロ野球は競争が激しいですが、頑張ったら頑張った分の成果があります。でもこれは一年一年の勝負ですから常に一定のサラリーをもらえるわけではないですが、これが1200万になったり2000万、3000万になることもあります。